カタログをめくるだけの設計に、なぜ私たちは違和感を抱かないのか〜西洋の「分離・細分化」と、失いかけている「全体をまとめる意志」〜【至誠のマネジメント17】

こんにちは、パラーツの鈴木です。

本日は、私が感じている建築現場やワークプレイスづくりの本質的な違和感と危機感について、西洋近代化がもたらした「分離・細分化」と「全体をまとめる意志」というテーマで説明したいと考えています。

まえがき:違和感を抱く「数パーセント」のあなたへ

現代の建築現場やワークプレイスづくりの最前線において、「何かがおかしい」「本質(Why)から決定的にズレている」という強い違和感と危機感を抱いている人は、もしかすると業界全体のほんの数%の方にすぎないのかもしれません。大半は、戦後80年で醸成された「空気と雰囲気」の中で生き、目先の利己や保身、あるいは効率化という名の波に流されざるを得ないかもしれません。

利己の意識を抑え、利他の精神を持って「いかに社会や次世代の役に立つか」を真剣に考えたとき、人間が辿り着く道は「他者と歴史に学ぶこと」以外にあり得まないと私は感じています。生きる者として、親として、あるいは先達の知恵を受け継ぐ者として、当たり前の「至誠」を尽くすこと。先達が後世へ遺してくれた一つの「学問」を尊び、地域や専門を超えて柔軟に寄り添う「マルチ・アイデンティティ」を身につけ、そして目に見えない真理へと「祈り」を捧げることです。本稿は、その当たり前の感覚を持ちながらも、現場の構造的慣習などで静かに苦闘している数少ない真面目な実務者へ向けて書き記すものです。

西洋近代化がもたらした「分離・細分化」とカタログ建築の錯覚

なぜ、現代の設計や現場からは「手触り感」や「深い安心・安堵」が失われてしまったのでしょうか。その根底には、西洋近代化が持ち込んだ「分離・専門分化主義」があります。
西洋的な管理手法は、効率(How)を追求するあまり、設計と施工を完全に切り離し、管理(PM)と作業を分断しました。さらに、世界を細分化して数値やシステムでコントロールしようとする人間根本にある支配欲(ウシハク)」が背景にあります。その極致が、現代の「カタログ建築」だと思いませんか。

工場で量産された建材や仕様をカタログから選び、パズルのように組み合わせるだけの行為。本来、そこには論理的なクリエイティブとは遠い活動です。しかし、それを自らの「素晴らしいセンス」だと錯覚し、結果として現場の職人や将来の利用者に無理と不条理(ノイズ)を強いることに繋がる場合があります。そこには、古美術骨董などに宿る真の「手仕事・本物」を知らぬまま、上辺の仕様やデザイン(巧)に酔ってしまう危うさがあります。「Why(本質)」をしっかりと設定せず、肌感覚で捉えることを放棄したまま進む西洋的なアプローチは、痛い目を味わわないと自らの過ちに気づけないのかもしれません。

40年変わらぬ現場の現実|誰も「まとめる」重荷を背負わない

私自身、社会に出てからの40年間、現場のリアリティを愚直に見続けてきました。現場をひとつに「まとめる」という業務には、膨大な精神的負担と労力が伴います。建築の幾何学、納まり、法規、そして人間関係の隙間に落ちるすべてのノイズを拾い上げ、一つの空間へと縫い合わせる作業だからです。しかし、この「まとめる」という行為は、どれほど骨を折っても評価や見返りが少ないため、誰もがその重荷を背負いたがらないのが現実なのかもしれません。40年前からあまり変わっていません。

40年前の現場には、この「まとめる意志」を持った設計者に加え、施工者側が確かな手わざと意地で現場をフォローする職人技術と信頼関係(シラスの構造)が生きていました。しかし現在、現場の職人気質は「出来栄えや品質」よりも「量をこなす」ことが優先されているのかもしれません。さらに拍車をかけているのが、現在のプロジェクトマネジメント(PM)の曖昧さです。しかし、救いはあります。私のブログにおいて、『監理』と『管理』の決定的な違いを説いた記事には、常に多くのアクセスが集まり続けています。これは、現場で疑問と違和感を抱えながらも、誰にも相談できずに自力で解を求めて悩んでいる真面目な技術者が確かに存在しているという、何よりの証拠です。

考察:未来の技術者へ|AI時代を生き抜くサバイバル術

私は、この構造は長続きしないと感じています。なぜなら、これからは「AIとロボティクス」の急速な進化、そして現場技術の低下に伴うコスト増大により、数年のうちに決定的な構造変化(破綻と再編)が訪れると想定しているからです。カタログの検索や定型的な工程管理、仕様の照合といった作業(How)は、すべてAIやロボティクスが瞬時に代替する時代が来るでしょう。そのとき、人間に残される本質的な業務は、下記の4つです。

1.構想(Whyを紡ぎ出す理念と意図)
2.監理(至誠をもって品質と意図を護る眼差し)
3.公機関への申請(法と秩序を味方につける倫理)
4.お客様との対話(心と心を響き合わせるダイアローグ)

現在の組織の効率第一の現場教育が、現時点の現場のリアルです。しかし、どのような環境にあろうとも、それを「自立のためのサバイバル」の糧と捉え、自分の力で学び、現場の隙間を泥臭く「まとめる意志」を磨き続けること。その苦闘の中で抱いた問いが、あなたの潜在意識に到達したとき、あなたはどんな時代が来ても自らの足で立ち、自立した技術者として生き抜く種(技術力)を手にしています。数年後、市場が痛い目を見て本質(Why)を渇望し始めたとき、AIやロボティクスを自在に従え、「真面にまとめる意志」を持って現場に安堵をもたらすのは、他でもないあなた自身です。

パラーツが提示する「学問・アイデンティティ・祈り」の体系(パラーツOS)は、そうした孤高の志を持つ未来の技術者を救い、共に次世代の安心と安堵を築くために存在しています。

Kindle電子書籍(全三巻)のご案内

本記事で触れた思考法や実践知は、Kindle電子書籍『パラーツ文庫・より良い方法シリーズ(全三巻)』にてより体系的にまとめています。

【第一巻】『ワークプレイスづくり 安心とゆたかさのために』
(建築とワークプレイスの視点から紐解く総論・基礎思想)
★創刊・普及特別価格:290円(ペーパーバック版1,320円より約78%OFF・期間限定)
※「まずは第一巻から知の体系に触れていただきたい」という想いから、現在お試し価格にて公開中。

【第二巻】『ワークプレイスづくり 現場哲学を持ち創意工夫を凝らす方法!』
(現場視点から紐解くプロジェクトのより良い在り方と実践)

【第三巻】『ワークプレイスの知 苦手意識があるワーカーのための法を味方につける方法!』
(歴史を根本から理解し生成AIの活用法までを学べる法規範・構造)

現場での実務経験、日本文化や思想の探究、そして最新テクノロジーの活用を統合し、「一隅を照らす」知恵として凝縮した一冊です。Kindle Unlimited(読み放題)にも対応しておりますので、ぜひお手元に置いてご活用ください。

パラーツ計画技術研究所 知の構法構築家 鈴木邦彦

●👉この連載記事のハブページはこちら

ワークプレイス
シェアする
鈴木 邦彦をフォローする
管理人

パラーツ計画技術研究所 代表 / 一級建築士・工学修士

専門領域:建築構法・建築生産・ワークプレイスデザイン・ものづくり経営
主要資格等:一級建築士 / 監理技術者 / 儀礼本科修了 / 茶道文化検定
実績・執筆:Amazonカテゴリ1位獲得著者(単著3冊)、公益財団法人 建築技術教育普及センター テキスト共著 ほか

【パラーツにおける「3つの探求軸」】
■ 建築構法の専門家として
一級建築士として長年建築の現場や監理に携わってきた視点から、構法学の本質を現場実務に活かすことを探求してまいりました。当ブログ「パラーツ」にて、その知見と技術的成果を余すことなく公開していきます。

■ ものづくり経営学の探求者として
ものづくり経営学に基づくマネジメントを探求し、現場実務のマネジメントに活かす実践的な方法を伝えていきます。

■ 日本歴史・文化の探求者として
日本の歴史の探求者として、先達に感謝しながら、歴史の本質と先達の思いを未来へ繋いでまいります。

【学歴・職歴】
・1987年:明治大学大学院 博士前期課程修了(工学修士)
・1987年-1997年:集工舎建築都市デザイン研究所
・1997年-2002年:機械土木系事業会社
・2002年-:インテリア・什器系事業会社
・2022年-:パラーツ計画技術研究所 設立
「建築・都市・土木・インテリア」という多様な領域にまたがり、「開発・設計・監理・管理」という多角的な実務経験を長年にわたり積み重ねてまいりました。

【執筆・著書実績】
[単著]
・『ワークプレイスづくり 安心とゆたかさのために』
・『ワークプレイスづくり 現場哲学を持ち創意工夫を凝らす方法!』
・『ワークプレイスの知 苦手意識があるワーカーのための法を味方につける方法!』

[共著・公的テキスト等]
・『インテリアプランナー更新講習テキスト ワークプレイスのリ・デザイン』(公益財団法人 建築技術教育普及センター)
・『インテリアプランナー更新講習テキスト New NormalとWorkplace』(公益財団法人 建築技術教育普及センター)
・『SD別冊25 近未来実験集合住宅NEXT21「部品3パート」』
・『コンバージョン[計画・設計]マニュアル「サブシステム・インフィル」』
・『群居29 特集X年目のすまい』 ほか

【ブログ運営の目的と基本姿勢】
当ブログは、これまでの人生の中で縁をいただいた専門・組織・分野における多様な実務経験と実直な学びを基に、ワークプレイスに関連する技術的成果により、これからの未来を生きる後世の役に立つために創業した「パラーツ計画技術研究所」の公式ブログです。

自らの専門分野を広義・狭義にわたり説明すると共に、関連する先達や第一人者の成果を尊重・引用させていただきながら、読者の実務や人生に役立つ「生身の知恵(単なる知識ではなく、本質を見抜く智慧)」のプラットフォームとして発信を行っています。

[参考文献およびAI協働ポリシー]
本記事の執筆にあたっては、時代や分野を越えた「より良い方法」を導き出すため、各分野の先達や第一人者の知見を拝受すると共に、AI(Google Gemini)との対話を通じて得られた知見を情報の整理および構造的な考察の補助として活用しています。人間の「身体感覚(手)」とAIの「知(脳)」が尊厳を持って協働し、時空を越える「安堵」の空間を追求する――これからの時代における「人間とAIの共生」のあり方を、本ブログを通じて実践・記録しています。

※当ブログからの外部リンクは、記事コンテンツ間の内部リンク、著書への案内、および先達・第一人者の公式サイト/YouTubeへのリンクのみで構成されています。直接の広告リンク(アフィリエイト等)は含みませんので、安心してお読みください。

鈴木 邦彦をフォローする
タイトルとURLをコピーしました