ノイズを祓う「結界」の構法|~出雲と伊勢に見る空間美学と、小泉八雲のオープンマインド~【至誠のマネジメント15】

こんにちは、パラーツの鈴木です。

本日は、ノイズを祓う結界の構法について説明いたします。現代のワークプレイスや都市空間には、効率と機能性、そして視覚的な情報という「目に見えるノイズ」が溢れかえっているように感じます。私たちは知らず知らずのうちに、自らの心をノイズにさらし、安堵を見失っているのかもしれません。

本稿では、年間1,500回の神事を執り行い公の基盤と統一美を象徴する「伊勢神宮」と、下り参道から始まり目に見えない縁や人々の心を包み込む「出雲大社」という二大聖地の空間構造を比較し、さらに、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が出雲の風土に見出した「オープンマインド(包容力)」と「目に見えない世界への感応」を手掛かりに、人々の心に安堵をもたらす建築とワークプレイスにおける「結界の構法」を紐解きます。

まえがき

●西洋の近代二元論の限界と「目に見えない真理」への回帰
分析は管理(How)だけで、人間を縛ろうとするウシハク的な空間構造に対するアンチテーゼとして、「目に見えない真理」への回帰が求められている時代背景があると感じています。

●小泉八雲が愛した出雲の「洗練された混沌」
西洋の近代二元論を超え、片眼のハンディキャップを持つ小泉八雲が五感と心で聴き取った「目に見えないものとの調和」は、目に見えない真理によって洗練された混沌ではないでしょうか。

●伊勢と出雲:公の基盤(秩序)と個の聖域(安堵)の二重奏
日本は、西洋的な内と外を明確に遮断する壁による遮断ではなく、日本の伝統の空間構成はグラデーション状に環境を制御しています。日本の伝統建築は「結界」や「障子」「襖」「御簾」「生垣」などで、光・風・視線・音などの「ノイズ」を段階的に減衰させる、必要な要素を受け入れつつ不要なノイズだけを濾過する動的なコントロール手法です。単なるデザインとしての伝統ではなく、部材の組合せや空間の重ね方による構法(メカニズム)によって、公の基盤(秩序)と個の聖域(安堵)が保たれているのです。

*西洋の近代二元論とは、17世紀の哲学者ルネ・デカルトによって確立された、世界を「心(精神)」と「物(身体・自然)」という、互いに独立した2つの相容れない要素に分けて捉える考え方です。

伊勢神宮の「昇華」と、出雲大社の「へりくだり」~空間構法の対比~

●宇治橋と五十鈴川(伊勢神宮)

俗界と聖域を画す直線の橋(宇治橋)と、自然の整流(五十鈴川御手洗場)で身体を禊ぎ、整然とした杉並木の参道から正宮へ「上り(仰ぎ見る)」ながら自らを整える「太陽の秩序と建築構法」。

●下り参道と祓社(出雲大社)

鳥居をくぐり、全国でも珍しい「下り参道」を下ることで自らの自我をへりくだらせ、祓社でノイズを落とす。神聖な森(杵那築森)や木漏れ日の松の参道を経て、高さ48mを誇った古代本殿(心御柱)の包容力へ至る「幽世と縁の建築構法」。

*幽世(かくりよ)と縁(えにし)の建築構法
日本の伝統建築が持つ「目に見えない世界や神仏(幽世)」と「人と人、人と自然のつながり(縁)」を空間として具現化する思想と技術の象徴。

小泉八雲が捉えた「オープンマインド」と「結界の真髄」

●「音のない贅沢」と神楽殿の大しめ縄

出雲大社神楽殿の巨大なしめ縄が果たす役割は「結界」です。外敵を排斥する壁ではなく、不条理やノイズを和らげ、内なる心(安堵)を護る「シラスの境界線」です。

●小泉セツ(妻)との対話と「多種多様な神々(個性の共存)」

出雲大社神在月(十九社)に集う多種多様な神々のように、個性を否定せず受け入れる出雲の風土は素晴らしいです。小泉八雲が「飾り気のない祈り(拙)」に見出した、庶民の暮らしに息づく至誠は、より良い個性の共存から成り立っているのではないでしょうか。

現代ワークプレイスにおける「結界の構法」への応用

●ノイズを段階的に濾過するアプローチ設計

オフィスのエントランスから執務室へ至る導線に、出雲大社の下り参道・祓社のような「思考のノイズを祓うシークエンス(移り変わり)」を取り込むことが、ひとつのノイズを祓う「結界」の構法として、現代のワークプレイスの役割を引き立てる上で有効であると感じています。

●「巧」を排し、「拙」と「和気」を育む空間デザイン

過剰な装飾(巧)を削ぎ落し、素朴な素材感と光・音の静寂(結界)をつくることで、そこに集う人々が自我(ノイズ)を脱落させ、本来の集中と共創を発揮できる場づくりができるようになります。

時代を超える「至誠のマネジメント」

伊勢神宮(公の基盤)と出雲大社(個の安堵)の双璧が揃うことで、建築構法的にな見地から見ると、結界のありようとして、完璧な調和をみせることができます。

過剰な装飾の単なるオフィスデザイン論を超え、人間が目に見えない真理と響き合い、自律して生きていくための「心の拠り所(結界)」を最高のクオリティで構築していくこと。これこそが、パラーツが提示する時代を超える「至誠のマネジメント」です。

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パラーツ計画技術研究所 知の構法構築家 鈴木邦彦

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管理人

パラーツ計画技術研究所 代表 / 一級建築士・工学修士

専門領域:建築構法・建築生産・ワークプレイスデザイン・ものづくり経営
主要資格等:一級建築士 / 監理技術者 / 儀礼本科修了 / 茶道文化検定
実績・執筆:Amazonカテゴリ1位獲得著者(単著3冊)、公益財団法人 建築技術教育普及センター テキスト共著 ほか

【パラーツにおける「3つの探求軸」】
■ 建築構法の専門家として
一級建築士として長年建築の現場や監理に携わってきた視点から、構法学の本質を現場実務に活かすことを探求してまいりました。当ブログ「パラーツ」にて、その知見と技術的成果を余すことなく公開していきます。

■ ものづくり経営学の探求者として
ものづくり経営学に基づくマネジメントを探求し、現場実務のマネジメントに活かす実践的な方法を伝えていきます。

■ 日本歴史・文化の探求者として
日本の歴史の探求者として、先達に感謝しながら、歴史の本質と先達の思いを未来へ繋いでまいります。

【学歴・職歴】
・1987年:明治大学大学院 博士前期課程修了(工学修士)
・1987年-1997年:集工舎建築都市デザイン研究所
・1997年-2002年:機械土木系事業会社
・2002年-:インテリア・什器系事業会社
・2022年-:パラーツ計画技術研究所 設立
「建築・都市・土木・インテリア」という多様な領域にまたがり、「開発・設計・監理・管理」という多角的な実務経験を長年にわたり積み重ねてまいりました。

【執筆・著書実績】
[単著]
・『ワークプレイスづくり 安心とゆたかさのために』
・『ワークプレイスづくり 現場哲学を持ち創意工夫を凝らす方法!』
・『ワークプレイスの知 苦手意識があるワーカーのための法を味方につける方法!』

[共著・公的テキスト等]
・『インテリアプランナー更新講習テキスト ワークプレイスのリ・デザイン』(公益財団法人 建築技術教育普及センター)
・『インテリアプランナー更新講習テキスト New NormalとWorkplace』(公益財団法人 建築技術教育普及センター)
・『SD別冊25 近未来実験集合住宅NEXT21「部品3パート」』
・『コンバージョン[計画・設計]マニュアル「サブシステム・インフィル」』
・『群居29 特集X年目のすまい』 ほか

【ブログ運営の目的と基本姿勢】
当ブログは、これまでの人生の中で縁をいただいた専門・組織・分野における多様な実務経験と実直な学びを基に、ワークプレイスに関連する技術的成果により、これからの未来を生きる後世の役に立つために創業した「パラーツ計画技術研究所」の公式ブログです。

自らの専門分野を広義・狭義にわたり説明すると共に、関連する先達や第一人者の成果を尊重・引用させていただきながら、読者の実務や人生に役立つ「生身の知恵(単なる知識ではなく、本質を見抜く智慧)」のプラットフォームとして発信を行っています。

[参考文献およびAI協働ポリシー]
本記事の執筆にあたっては、時代や分野を越えた「より良い方法」を導き出すため、各分野の先達や第一人者の知見を拝受すると共に、AI(Google Gemini)との対話を通じて得られた知見を情報の整理および構造的な考察の補助として活用しています。人間の「身体感覚(手)」とAIの「知(脳)」が尊厳を持って協働し、時空を越える「安堵」の空間を追求する――これからの時代における「人間とAIの共生」のあり方を、本ブログを通じて実践・記録しています。

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