こんにちは、パラーツの鈴木です。
本日は、マネジメントの根幹である「インテグリティ(真摯さ)」を取り上げ、現代の建築現場が抱える課題と、ドラッカー思想の真髄について深掘りしていきます。
まえがき
西洋から輸入された設計と施工を分離するマネジメント手法(設計方法論、建築構法、建築生産、そしてQCDSE管理)において、現場のPM(プロジェクトマネージャー)が好んで形骸化した管理手法を使っているとは考えにくく、むしろ発注者と現場の板挟みで苦労されているのが現実です。PM担当者自身もまた、管理書類の作成や運用に追われ、『より良いマネジメントで、質の高い建築を実現したい』という本来の想いから遠ざかってしまっているのではないでしょうか。
『電子書籍第二弾・現場哲学』で示した通り、プロジェクト成功の真の要因は「メカニズムの最適化」と「一人ひとりの技能の向上」の融合であり、それを具体化するのが「良い設計の良い流れ(整流)」です。
では、なぜ精緻な管理ツールを回しても「手触りのある現場」から遠ざかってしまうのか? 本記事では、前回の問いである「設計の想いの作り込み」と「マネジメントの役割範囲」を基軸に、管理の形骸化を改善する根本概念「インテグリティ(真摯さ)」と「整流」の視点から、建築現場の課題と解決の方向性を紐解きます。
現代の建築現場の主な課題(パラーツ×Gemini)
●QCDSEという管理要素では、隙間を埋めることが難しい
西洋から輸入されたQCDSEなどの管理手法は、品質(Q)・コスト(C)・工程(D)・安全(S)・環境(E)という重要な管理要素を明確に定義しています。しかし、ここには例えば「隙間・流れ(整流)・大まか」といった動的な概念が含まれていません。
仮に、これら5つの管理要素を適切に機能させることがマネジメントの役割だとして、5W1Hで検証して抜け漏れがなければ問題ないはずですが、実際の現場では必然的に多くの抜け漏れが生じます。そして、その抜け漏れこそが管理の「隙間」であり、「大まかに捉えて問題なしと判断する」のか「サポートが必要かを検討する」のかが問われる領域です。
5つの要素に基づくチェックシートをどれほど精緻に作り込んだとしても、要素間に存在する「隙間」そのものを埋めることはできません。実際の建築プロジェクトでは、設計図書を段階的に詳細化しながら仕様が決定していくため、途中に無数の「隙間」が発生しますが、その隙間をいかに管理すべきかという概念は明文化されていないのが実状です。
●インテグリティの真価と現実との乖離
管理手法が形骸化する根本的な原因は、ルールを厳守する受動的・他律的な「コンプライアンス(法令順守)」の姿勢にとどまり、ルールのない隙間に対応しきれない点にあります。自ら考えて正しく振る舞う能動的・自律的な「インテグリティ(真摯さ)」が現場で機能しにくくなっているのです。
インテグリティとは、誰も見ていなくても正しさを貫く能動的・自律的な「至誠」の態度であり、ピーター・ドラッカーが説く「マネージャーに必要な絶対の資質」にほかなりません。
●評価制度の西洋化と組織体の歪み
現代社会において「今だけ・金だけ・自分だけ」と揶揄される風潮がある中で、現実の評価体系もまた「いかに高く売るか」「目先の数値や声の大きさ」ばかりが注目されがちです。その結果、至誠を持って見えない隙間を地道に埋める人が正当に評価されにくい構造的な歪みが生じています。
たとえ、プロジェクト成功の真の要因が「メカニズムの最適化」と「一人ひとりの技能の向上」の融合にあると気づいたとしても、既存のメカニズムを再構築し関係者を教育するには多大な労力を要します。しかし、長期的なスパンで見れば大幅なコスト削減につながるだけでなく、AIやロボティクスのスムーズな導入など、将来的に多大な恩恵をもたらすはずです。
考察 チェックシートを超えて、「シラス(至誠・協創)」の現場へ
建築現場における管理の「隙間」を埋めるために真に必要なのは、チェックシートの項目を増やしたり内容を細分化したりすることではありません。現場関係者が互いに深い信頼を寄せ合う「シラス(至誠・共創)」の意識を育むことこそが、最も本質的な解となります。
お互いに「シラス(至誠・共創)」の精神を養うことで、形式的な書類管理を超えて、現場を有機的・動的に捉えた真のマネジメントが可能となります。
次回【至誠のマネジメント3】では、「気のエネルギーを整え『整流』へ」「フェアプレイ精神」「スペシャリストの役割主義と知足」「隙間の至誠(菩薩行)」「自己統治(如来)」といった具体像を深掘りしながら、「シラス」の概念をより立体的に提示してまいります。
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パラーツ計画技術研究所 知の構法構築家 鈴木邦彦
