こんにちは、パラーツの鈴木です。
本日は、建築基準法の構造耐力関係の規定について説明いたします。
まえがき
まず、建築で用いる「構造」の意味は、社会一般で言う「社会構造・人体構造」といったその分野の全体を指す訳ではなく、力学そのものです。
建築学の中で、社会一般で言う構造について探求している学問は、私の専門の「建築構法」です。
よって、建築基準法の構造に関する規定は、力学に関する規定になります。
構造耐力に関する規定の主な目的
建築基準法の構造耐力に関する主な目的は、以下の想定を基にして規定されています。
①概ね500年に1度程度生じる可能性があるような極めて稀に生じる大規模な積雪、暴風、地震に対して建築物が倒壊、崩壊等しないこと。すなわち、財産としての建築物にはダメージが生じても人命の安全は確保すること。
②概ね50年に1度程度生じる可能性があるような、建築物が存する間に1回以上遭遇する可能性のある稀に生じる積雪、暴風、地震等に対して建築物が損傷しないこと。人命の安全を確保することは当然として、財産としての建築物についてもほぼ改修・修理が不要であること。
③自重、積載荷重により使用上の支障となる変形・振動が生じないこと。
構造耐力の規定
こうした安全性等の目的を達成するため、建築物の規模に応じて定められた「仕様規定」及び「構造計算」に適合するものであることが規定されています。
◆該当条文:建築基準法第二十条(構造耐力)
建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。(後略)
◆目的
・荷重・圧力・振動・衝撃への安全確保。
◆規模別分類
小規模な建築物
・木造:階数2以下、延べ面積500㎡以下、高さ13m以下かつ軒の高さ9m以下のもの。
・木造以外:階数が1、かつ延べ面積が200㎡以下のもの。
中規模・大規模な建築物
・上記建築物以外の建築物で、高さ60m以下のもの。
超高層建築物
・高さ60mを超えるもの。
◆基準内容
建築基準法第二十条の当該各号に、この規模別分類に基づく基準内容が規定されています。規定内容については、ある一定規模以上は、仕様規定に加え構造計算を求められます。ここでは、構造計算方法である許容応力度計算、保有水平耐力計算、限界耐力計算、時刻歴応答計算の内容について説明いたします。
構造計算の種類
●許容応力度計算(きょようおうりょくどけいさん)
地震や風などの荷重(力)が建物にかかった際に、柱や梁などの構造部材にどの程度の応力(力)が発生し、その応力(力)と部材の許容応力度(強度)を比較し、部材と接合等の安全性を検証する構造計算手法。
●保有水平耐力計算(ほゆうすいへいたいりょくけいさん)
大規模地震の発生時においても、建物が倒壊・崩壊しないように、建物の水平方向の抵抗力(保有水平耐力)が、大規模地震時に建物に作用する力(必要保有水平耐力)を上回っていることを確認する構造計算手法。
●限界耐力計算(げんかいたいりょくけいさん)
地震や風などの荷重(力)が建物にかかった際に、建物が倒壊・崩壊しない限界耐力(最大耐力)を評価し、建物の崩壊危険性を評価する構造計算手法。
●時刻歴応答解析(じこくれきおうとうかいせき)
時間と共に変化する地震動や風などの外部からの力に対して、建物が時間と共にどのように揺れて変形するかを精密にシミュレーションする構造解析手法。
弾性域と塑性域
●弾性域(だんせいいき)
建物に荷重(力)を加えたとき、その荷重(力)を取り除くと建物の構造部材が元の状態に戻る変形領域のこと。
●塑性域(そせいいき)
建物に荷重(力)を加えて変形させ、その荷重(力)を取り除いたとしても建物の構造部材が元の状態に戻らず、永久にひずみが残る領域のこと。
一部の部材が塑性域に達する等の損傷を受けながらも建物として耐えることができる限界を計算するのが、保有水平耐力計算や限界耐力計算です。
あとがき
base 構造耐力関係の規定は難しくない
建物に荷重(力)が加わった時に、建築基準法の目的に則した範囲で、荷重(力)に耐えられるようにする規定です。実際の計算にはノウハウが必要ですが、法的解釈では難しいことはありません。