こんにちは、パラーツの鈴木です。
本日は、学問のすゝめ「愛国心・第一条」について説明いたします。
はじめに
「愛国心」と書いてしまうとタブー視とされていたように感じますが、現在の世界情勢を踏まえて、日本の国の状況を考えると、自分・仲間・後世、そして、頑張って今の豊かさの時代を築いてくださった先達のためにも、私たちは、この日本の環境を大切にすることが本当に大切だと思っています。
今回は、すべての人間、また人間と政府も権利において平等、そして国同士にも道理があるという前提で、道理を背いて非道なことをされた場合には「日本国中のみなが命を投げ出して国の威厳を保つ」という主張を紹介します。もっともな主張ですが読者の方々はどう感じられるでしょうか?
個人の独立があって、国も独立するという考え方の第一条を説明いたします。
学問のすゝめ 愛国心とは何か
●原文(福澤諭吉著:学問のすゝめより)
前条に言えるごとく、国と国とは同等なれども、国中の人民に独立の気力なきときは一国独立の権義を伸ぶること能(あた)わず。その次第三ヵ条あり。
第一条 独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず。
独立とは自分にて自分の身を支配し他によりすがる心なきを言う。みずから物事の理非を弁別して処置を誤ることなき者は、他人の智慧によらざる独立なり、みずから心身を労して私立の活計をなす者は、他人の財によらざる独立なり。人々この独立の心なくしてただ他人の力によりすがらんとのみせば、全国の人はみな、よりすがる人のみにてこれは引き受くる者はなかるべし。これは譬(たと)えば盲人の行列に手引きながごとし、はなはだ不都合ならずや。或る人いわく、「民はこれによらしむべしこれを知らしむべからず、世の中は目くら千人目あき千人なれば、智者上にありて諸民を支配し上の意に従わしめて可(か)なり」と。この議論は孔子様の流儀なれども、その実は大いに非なり。一国中に人を支配するほどの才徳を備うる者は千人にうち一人に過ぎす。
仮にここに百万人の国あらん。このうち千人は智者にして九十九万余の者は無智の小民ならん。智者の才徳をもってこの小民を支配し、あるいは子のことくして愛し、あるいは羊のことくして養い、あるいは威(おど)しあるいは撫(ぶ)し、恩威ともに行われてその向かうところを示すことあらば、小民を識(し)らず知らずして上の命に従い、盗賊、人殺しの沙汰もなく、国内安穏に治まることあるべけれども、もとこの国の人民、主客に二様に分かれ、主人たる者は主人の智慧にて、よきように国を支配し、その余の者は悉皆(しっかい)何も知らざる客分なり。すでに客分とあればもとより心配も少なく、ただ主人にのみよりすがりて身に引き受くることなきゆえ、国を患(うれ)うることも主人のごとくならざるは必然、実に水くさき有様なり。国内のことなればともかくもなれども、いったん外国と戦争などのことあらばその不都合なること思い見るべし。無智無力の小民ら、ほこを倒(さかしま)にすることもなかるべけれども、われわれは客分のことなるゆえ一命を棄つるは過分なりとて逃げ走る者多かるべし。さすれこの国の人口、名は百万人なれども、国を守るの一段に至りてはその人数はなはだ少なく、とても一国の独立は叶(かな)い難きなり。
右の次第につき、外国に対してわが国を守らんには自由独立の気風を全国に充満せしめ、国中の人々、貴賎(きせん)上下の別なく、その国の身の上に引き受け、智者も愚者も目くらも目あきも、おのおのその国人たるの分を尽くさざるべからず。(中略)
もとより国の政(まつりごと)をなす者は政府にて、その支配を受くる者は人民なれども、こはただ便利のために双方の持ち場を分かちたるのみ。一国全体の面目にかかわることに至りては、人民の職分として政府のみに国を預け置き、傍(かたわら)よりこれを見物するの理あらんや。すでに日本国の誰、英国の誰と、その姓名の肩書に国の名あればその国に住居し、起居眠食、自由自在なるの権義あり。すでにその権義あればまたしたがってその職分なかるべからず。
●現代語訳(要約:齋藤孝訳:現代語訳学問のすすめより)
・独立とは、自分の身を自分で支配して、他人に依存する心がないことを言う。
・この国の人民は、主人と客の二種類に分かれる。
⇒主人:智者は主人となって好きなように、この国を支配する。
⇒客人:何も心配などせず主人に頼りきって、自分で責任を引き受けない。
・国内のこと以外、いったん外国との戦争になった場合、その不都合なことを考えたい。
・第一条結論:外国に対してわが国を守ろうとするならば、自由独立の気風を全国に充満させ、国中の人々が、社会的身分の上下を問わず、自分の身に国を引き受けて、賢い者も愚かな者も、物事がよく見通せる者もそうでない者も、それぞれ国民としての責任を果たさなければならない。
まとめ
base 愛国心なるものを意識する
私たちは、日本の未来に対して、なんとなく不安を抱えてしまっているのではないかと思います。その原因は色々とあると思いますが、自分なりに想定できる原因を確かめて、どのようにすれば、私たちの日本を安全・安心・ゆたかに保てるか、一人ひとりが意識して、なんらかの行動をすることが重要だと思っています。
参考文献等
参考文献 福沢諭吉:学問のすすめ 青空文庫 20120618
参考文献 福澤諭吉・斎藤孝:現代語訳学問のすすめ ちくま書房 2011.03.25