こんにちは、パラーツの鈴木です。
本日は、私が専門としている「建築構法・建築生産」と、経済学分野で類似の取組みをされている「ものづくり経営学」について説明いたします。
考え方・やり方に迷う時
大学の建築学科等で学び、社会に出て実務を行おうと思っていも、図面の書き方、図面の種類と揃え方、建築基準法等の法規の解釈と適合、現場打合せ、施工図の書き方やチェックの仕方等、設計・施工問わずに、やらなくてはいけないことが山積みで分からないことが沢山あるのが、普通だと思います。
建築設計資料集成や各種の設計や計画に関する書籍、建築士や施工管理技士等の国家資格の勉強・インテリアプランナーやインテリアコーディネーター資格等により設計と施工のやり方について学んで、何とか個別案件(プロジェクト)をこなしていく、建築やワークプレイスの分野に限ったことではないですが、実践の場で、考え方・やり方に迷い学びながら実務を行うことは普通のことです。
そこで、考え方・やり方を学ぶために、設計と生産(施工)の方法を体系的に探求している学問を紹介いたします。建築やインテリアの設計・施工は、現地での一品生産が主な特徴のため、「作品」的な要素がクローズアップされがちですが、これらの知識を体系的に知り、技術(考え方・やり方)に役立てることが、「安心やゆたかさ」につながると感じています。
なお、法解釈については、詳しくは「法解釈とは?」を参照ください。
建築構法・建築生産 ものづくり経営学
建築構法・建築生産(建築学)
建築構法は、戦後に成立した学問分野(正確には名称変更)で、1960年代からはじまる設計方法論のひとつの方法としてはじまり発展してきたものです。狭義の意味では、モノの構成方法と捉えられることが多いですが、広義には建築全体を成立させているシステム、アーキテクチャに非常に近い概念と捉えられています。1970年代からは、扱う領域に生産分野が加わり、建築構法・建築生産となります。この頃から、生産(建築施工)の仕方に応じて、建築構法がどう変わっていくかが主題として扱われてきました。建築の基本は、既製部品(製品・半製品・加工品)のアッセンブルですから、建築構法で最適な設計を探り、建築生産で最適な施工方法から最適な施工方法を探って、VE(Value Engineering)で最適化していくものと解釈しています。
参考論文:建築構法学・構法計画学の成立・発展の研究
新築の建物の需要が減り既存の建物を活用して有効に長く使おうとする中で、今までの様に建築の専門家である建築士が作るばかりでなく、専門的な学びをしていない方も多く参画するようになります。そんな時代背景にも即しながらも、この分野は、新しいテーマに挑戦し学問され続けています。
なお、この戦後に成立した建築構法は、建築学第一講座(各部構造・一般構造)と呼ばれる建築設計の定石(物事を行う時の最上となる方法)の講座の名称変更です。コンドルの時代(明治時代初頭)から続いてきた学問領域です。
*アーキテクチャ概念
建築現場でアッセンブルされる多くの構成要素が、総合され見事な組み合わせで完成されていること。
ものづくり経営学(経済学)
ものづくり経営学は、経済学分野の「広義のものづくり概念」と工学分野の「アーキテクチャ概念」との組み合わせで成立している学問領域です。
広義のものづくり概念
広義のものづくり概念とは、「良い設計の良い流れ」のことです。
まとめ
学問への振り返り
base バランスが大切
毎日の業務の中で個別案件(プロジェクト)の設計と施工を行っている中で、事前に知っていた方が良いことと、経験する中で学んで行った方が良い(そうせざるを得ない)ものとがあり、どう習得することが良いかはケースバイケースです。
ただ、最終的な出来栄えが、伝達媒体である仕様書・設計図書、担当活動のクオリティに掛かっているため、一番良いバランスで習得していくことが必要であると感じています。まずは、これらの学問領域があり、さまざまなテーマが研究されていることを知ることからはじめると良いと思います。
base-plus 設計・監理と施工管理 明瞭化と最適化
「現場はいきもの」と例えられるように、個別案件(プロジェクト)が動きはじめると様々なことが起こってきます。そして、現場で起こった課題は乗り越えないといけません。また課題を乗り越えたとしても次案件(プロジェクト)のために課題の背景・根拠を明確にする必要性が出てくるでしょう。課題を乗り越える時、振り返りと次への反省をする時、建築構法・建築生産・ものづくり経営学は有効に活用できます。そうすることで、少しづつ設計・監理と施工管理の明瞭化・最適化が実現されていくと思われます。
監理と管理の考え方と役割の違いについては、別の記事コンテンツでまとめています。曖昧になる傾向があり、その曖昧さが明瞭化、最適化、合理化に影響しますので、参考としてください。
○明瞭化・最適化・合理化:「監理と管理の違い」
参考文献等
参考文献 内田祥哉:造 1996
参考文献 藤本隆宏他:建築ものづくり論 有斐閣 2015.07.10