こんにちは、パラーツの鈴木です。本日は、連載の予告です。
長年建築実務に携わっていると、建築マネジメントには腑に落ちないことが多く、私の疑問を基に、建築史だけでなく日本の歴史の中で関連する事柄を調べ考察し、納得できる新しいマネジメントを見出し育むための連載記事を書きたいと思っています。
連載の略称は「至誠のマネジメント」です。では、その概要を説明いたします。
まえがき(腑に落ちない二つの疑問)
●実務経験からの疑問
人間は、過去に経験したこと・現在経験していることに基き、その関連事項を確認しながら判断しないと、精度が高く的確な判断ができないのではないかという、私の仮説からの疑問です。
私が、建築設計事務所で修業をさせて頂いた業務は、まだ、建築マネジメント方式が輸入されたばかりであまり浸透していなかった頃ですので、自ら設計し設計図書にまとめ、施工段階には建築現場で起こる様々な問題・課題を一つひとつ丁寧に解決し、現場作業を滞りない整流の方向へ導く、建築現場の品質管理の全責任を負う”まとめ役”という設計監理業務で、設計者である私の想いを描いた設計図書を自ら伝える役割です。
そこで疑問に感じるのは、『電子書籍第二弾・現場哲学』で説明した「ものづくり」と「良い設計の良い流れ」に例えると、第三者が、ものづくりという「設計者の想いを作り込むこと」を設計図書を読み込むだけで、滞りなく、肩代わりができるのだろうかという疑問と共に、設計と施工大きく分かれる現場で、両方の経験を得る機会がほとんどない中で、建築マネジメントは、何を根拠に判断すれば、最適な解が導けるのであろうか?
紙上の図面やデータだけではこぼれ落ちてしまう「現場の手触り」や「設計者の想い」をどのように伝え継承するかが課題になります。
●マネジメントの概念と活動範囲
建築現場の組織構成の両輪であるマネジメントとスペシャリストのうち、スペシャリストは、ある専門領域の枠の中で自らの専門性を活かし優れた成果を出すことが役割のため、その概念と役割、そして成果に対する評価が明確ですが、それに対して、マネジメントは、スペシャリストなどの人と組織を動かし、その建築現場の目標を最大限達成することが役割のため、その概念と活動範囲を具体的に把握することは極めて困難で、ベテランでない限り、当人も混乱するし、当人以外からはその役割が曖昧に見えてしまうのではないかという疑問です。
そこで、至誠のマネジメントと題して、連載記事を書き、その疑問に対するより良い方向を考察したいと考えています。西洋近代建築が日本に伝わってから、建築現場全体のより良いあり方に取り組んできた私の専門の建築構法・建築生産の視点から、歴史を紐解き課題を見つけ、そして、西洋近代建築が日本に伝わる前の歴史から、課題解決の方向性を示したいと考えています。
西洋近代建築、マネジメント、建築マネジメントの歴史からの考察
●西洋近代建築の歴史
『電子書籍第一弾・安心とゆたかさと第二弾・現場哲学』で説明したように、日本の近代建築は、明治時代1877年、イギリスの建築家のジョサイア・コンドルが、現在の東京大学工学部建築学科の前身において本格的な専門教育を行なったことに始まりました。
私の専門の建築構法は、ジョサイア・コンドルから西洋近代建築を学ばれた中村達太郎先生が、明治時代1901年に担当された「建築一般構造」が、第二次世界大戦後に「建築構法」と名称変更された学問です。1901年からの125年あまりの歴史の中で、この学問の流れが中心となり、西洋近代建築の日本建築の間の構造や構成、作り方に様々な葛藤を抱えながら検討され、設計、工事監理(旧名称:設計監理)、PM方式が採用され、組織ごとに様々な運用がされています。
●マネジメントの歴史
マネジメントの歴史は、『電子書籍第一弾・安心とゆたかさ』で説明したように、明治時代1911年フレデリック・テイラーにより考案された「科学的管理法」から始まったと言われています。テイラーは19世紀末に「マネジメントの目的は、雇用主に限りない繁栄をもたらし、併せて、働き手に最大限の豊かさを届けることであるべきだ」と言われていますが、何よりも効率性が追求されていたとも言われています。
テイラー以降、経営の原則についての様々なアプローチがなされてきましたが、昭和時代1973年ピーター・ドラッカーにより、世界で初めてマネジメントが体系化されました。ドラッカーは、効率性に加え、人間性を大切にしました。ドラッカーの思想の根底には、常に、「人間の本当の幸福とは何か?」という至誠の問いが流れています。
●建築マネジメントの歴史
昭和時代1980年代後半、建築物の大規模化・複雑化を機に注目され、西洋から輸入され普及してきた手法です。建築プロジェクトマネジメント方式は、発注者に代わり、あくまでも第三者的な立場で、企画段階から設計・施工に至るまでトータルに、品質・工期・コストを管理する手法です。
◆考察
明治維新以降の西洋近代化・科学化の流れを全面的に「正」とすることに疑問符が出てきた現代において、建築界の西洋近代化の流れの中で、何らかの見直しをすることで、建築現場に関わるすべての関係者にとって、より良い方向付けができるとしたら、その道が、新しいマネジメント・至誠のマネジメントであろうと思っています。
この連載では、西洋型PMの手法では足りない考え方と手法に対して、日本的感性(「縮み思考」「シラス/共創」など)から適切な手法を加えて再構築する試みを行なっていく予定です。
次回は、マネジメントの根幹である「インテグリティ」を取り上げ、現代の建築現場が抱える課題と、ドラッカー思想の真髄について深掘りしていきます。【至誠のマネジメント2】
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パラーツ計画技術研究所 知の構法構築家 鈴木邦彦
